第26章 reindeer
「悪ぃラン…実は俺さ、もうすぐ行かなきゃなんねーとこがあるんだ。」
「え?どこ?」
抱きしめられたまま耳元で聞こえる静かな声に耳を澄ませる。
「あいつ…八戒のとこ。」
「八戒…」
三ツ谷が大寿と和平協定を結んで
八戒は黒龍に行ってしまったことはもちろん知っていた。
けれど、今更何をしに行くというのだろう?
「まさか…連れ戻しに行くの?」
「……いや、そういうわけじゃねぇけど。
ちょっと呼ばれてんだ。」
三ツ谷は、千冬に礼拝堂に呼ばれていた。
千冬とタケミチがこっそり稀咲と半間と手を組んで、八戒が大寿を殺そうとしているかもしれないという思惑を突き止め、事実だとしたら止めるためなんだとか…
礼拝堂で何が起きるかはわからないが、
呼ばれた以上は行かないと…と決めていた。
しかも、稀咲と半間なんて…
なにか企んでいるかもしれないし、
もしも八戒が本当に大寿を……?
そう思ったら、この大事な時間を
犠牲にしても…自分は行かなくてはならない。
「すぐに戻ってくっから。
ランはここにいてくれ。
外出んなよ。雪降ってるし。」
「そっか…わかった。
気をつけてね?絶対にすぐに戻ってきて?」
「おう!良い子にしてろよ」
そう言って三ツ谷はまたキスをしてくれた。
特攻服に着替え、
お揃いのバングルとストラップをつけ
三ツ谷はインパルスを走らせ行ってしまった。