第26章 reindeer
もうひとつの秋冬仕様のほうは、
淡い紺色とチェック柄のバイカラーワンピースだった。
胸元がブラウスのようなリボンにあしらってあり、ウエストはベルト付きのプリーツスカートで、かなりエレガントなお嬢様のような仕様。
「どっちもすげー可愛い。(さすが俺だな)」
「本当にありがとう…大切に着るね!」
こんなに素敵な、しかも手作りの洋服がもらえるなんて…最高すぎる…!!
「ねぇ、隆…
私からも1つお願いがあるんだけど…」
「うん?なんだ?」
三ツ谷はクロスのバングルを腕につけながら返事をした。
「さっきあげたリップクリームつけて、
私にキスして。」
「っは…?!」
バングルから急いで顔を上げると、
悪戯っぽく笑っている小悪魔みたいなランがいる。
「・・・」
こいつの恥ずかしがるところと突然こう恥ずかしげもなく言動する価値観がつくづく分からない…
そう思いながら、おずおずと先程のリップクリームを唇に滑らせた。
その間も、目を見開いてジィっと
顔を見つめてくる。
「っ…」
なんでそんなに凝視してくんだよ。
柑橘系の良い香りが鼻をくすぐる。
チラリとルナマナを見ると、
2人は貰ったネックレスやスカーフ、そしてリップクリームに夢中でこちらを全く気にしていないようだ。
もしも見られていたとしても、
しなきゃなんないのか…?
もう一度ランに視線を移すと、
期待大の顔で見つめられていて生唾を飲み込む。
まぁそういうことだよな…。