第26章 reindeer
「つうか、雪…ついてるぞ」
三ツ谷はそう言ってタオルでランの頭を拭いた。
「ありがとう。
今日はホワイトクリスマスだよ!」
「そーだな。昨日も今日も寒すぎる…
こっち来てあったまれよ」
「そんな寛いでいらんないよ!
いっぱいごはん持ってきたんだよ?!
とりあえずケーキは冷蔵庫に入れとくね!」
「おう、ありがとな。けど俺も作ったよ?」
「えっ?」
「いちお。スープとサラダだけだけど。」
「さ、さすが隆…気が利く〜!」
ランは、三ツ谷が並べていく美しいカラフルなサラダと、チャウダースープに目を丸くしてしまった。
「だってまだ身体 本調子じゃねぇのにあんま無理させるわけにいかねぇし。…って言ったはずなのに…よくこんなに作ってきたな。」
「うん!だって私がいろいろ食べたいものあったから〜!」
実はランには昔から自分の口座があった。
死んだ母の保険金や、離婚した父から手切れ金みたいに振り込まれたお金が大量にあった。
祖父が佐野家に振り込んでいるお金の中から、佐野の爺ちゃんは毎月結構な額を小遣いとしてもくれる。
なのでランは、お金に苦労した経験は皆無なのだが、今まで何に使ったらいいのかわからなかった。
化粧品にもファッションにもあまり興味が無いからだ。
唯一興味があることと言えば、
料理や食べること。
だからランは昔から、好きなスイーツ(どら焼きが大半)などの食費にばかりちょこちょこお金を遣ってきた。
ちなみに今日作ってきた料理は、
手作りカルボナーラに、ローストビーフ、ラザニア、魚介のパエリア、卵入りミートローフだ。
子供の好きそうなものをチョイスしたつもりだが、結局はラン自身が好きな、なんとも重たい肉々しいメニューになってしまった。