第26章 reindeer
「あったかい…ありがとう… ラン。」
弧を描く万次郎の目。
あぁ、私はこの子供みたいな無邪気な万次郎の笑顔が、昔から大好きだ。
そう思いながら目を細める。
「どーいたしまして。」
万次郎は赤い鼻を隠すように
マフラーに顔を埋めながら笑った。
「実は俺も、
ランにクリスマスプレゼントあるんだよね」
「えっ!本当に?!」
「うん。家にあるからとりあえず帰ろーぜ。
もう0時回っちまったし。」
一緒にバイクの騒音を立てながら
家に戻ると、万次郎は小さな小包を渡してきた。
ワクワクしながら開けてみると、
そこにはリップクリームが入っていた。
オシャレなデザインで、イニシャルまで入っている。
「わぁ可愛い!口紅かと思ったぁ」
「だって三ツ谷とチューすん時にさぁ、
やっぱ唇カサカサだと引かれんじゃん?」
その言葉に、一気に顔が蒸気する。
「なっ、そっそれは大きなお世話だよ!」
「それにラン、化粧とかしねぇだろ?
でもそれ、ほんのり色が着くらしいぜ?
そろそろお前も、女らしくなるべきだと思ってね」
"俺はランにはいつまでも女らしくあってほしいと思ってるんだ"
昔、三ツ谷に言われた言葉を思い出した。
女らしく……
最近、ようやくだけど、
確実に自覚してきている。
自分は紛れもなく女なのであって、
心も体も女らしい女になりつつある自分自身を
受け入れられているということを。