第26章 reindeer
しばらく走ってから各々解散し、
ランと万次郎は場地の墓に行った。
「メリークリスマス、圭介…」
線香をあげて2人で手を合わせた。
もしもまだ圭介がいたら…
きっと今日も一緒に走ってたよね。
あのどら焼き…
ありがとう。
圭介のおかげで
私、手術乗り越えられたよ。
泣きながら食べたから
ちょっとしょっぱくて…
でも圭介の優しさいっぱい感じたよ。
それでね、今でもずっと
圭介は私のそばにいてくれてるんだなって分かった。
ありがとう。
この先また、どうしようもなく辛いこととか悲しいことがあった時、私のこと慰めてくれる?
励ましてくれる?
叱ってくれる?
七転び八起きだって立ち上がらせてくれる?
ねぇ…圭介…
圭介としたあのキスは
嫌じゃなかったよ。
「はぁ〜今年って一段とさみぃなぁ。」
「そうだね。さっきまで雪降ってたし。
明日はホワイトクリスマスになるかも」
バイクのところまで戻ってきてから、
ランは座席を開けて
あるものを万次郎に差し出した。
「メリークリスマス、万次郎。」
「え、なに?これ。」
「どうみてもマフラーでしょ。
これで温まって。」
それは、この冬、三ツ谷の中学の手芸部に入り浸って黙々と作っていた手作りマフラー。
「我ながらよく出来たと思うよ〜?
少し失敗したとこもあるけどなんとか誤魔化せたし。」
そう満足気に言って万次郎の首に巻いた。