第26章 reindeer
「俺だっておんなじだったよ。
妹たちとたった3人で家に残されてることが常だったしな。賑やかな街中とかテレビとか、そういうの見てちょっとイラついたことはあったな。
でもそれも次第に慣れてさ。ルナマナが物心つく頃にはぜってー寂しい想いさせたくなくて、なるべく理想のクリスマスにしたりした。サンタとかトナカイの帽子作ってやったり、いろいろ。」
そう言って白い息を吐いて笑う三ツ谷に、
ランは目を輝かせた。
「楽しそう!」
「うん。あいつらの心底楽しそうな笑顔見てるとさ、生まれた環境なんてマジでどうでもよくなるんだ。
なんでも結局は自分で創りあげるもんなんだ。
環境も、家族も、幸せも、なにもかも。」
そう言って遠くを見つめる三ツ谷と同じ方向を見る。
たくさんのビルや建物から
チカチカと光が零れていて星の瞬きのように見えた。
この光の数だけ、今日という日のいろいろな想い出があるのだろうと思った。
あの建物の中でも、あっちでもこっちでも…
中には孤独な人もいれば、優雅な家族もいれば、カップルもいて、幸せも不幸も健在しているはずだ。
それがたとえ幸せなクリスマスじゃなかったとしても、これから先の未来はどんな形でも自分自身で創りあげることができる。