第26章 reindeer
「ラン、お前ホントに平気?」
やはり1番心配してくるのは三ツ谷だった。
「ぜーんぜん余裕だよー。
だって別に体動かしてるわけじゃないもん」
「そーだけどよ…」
皆で川沿いにバイクを止めて休憩しているさなか、キラキラと光る水辺もイルミネーションのように美しくて2人は目を細めて佇んだ。
約束があったりなにか用事がある者たちはチラホラと帰って行った。
後ろの方で、万次郎やドラケンたちのふざけ合っている会話が聞こえる。
「私ね、子供の頃、クリスマスって嫌いだったんだ」
ランのポツリと言った言葉に、
三ツ谷は横を向く。
長いまつ毛が切なげに数回瞬きされ、
赤いスカーフが風に揺れた。
吐いている息が、雪のように白い。
「私のうちは、別にそんなイベント祝わなかったし。ただお母さんとケーキを食べたりはしたかなぁ。今思えば、それだけでもものすごく幸せな事なのにね。
あの頃私が求めてたのは、きっとおうちにツリーとか飾って家族みんなで賑やかにご馳走囲んだりとか…そんな感じだったんだろうね。
贅沢な奴だよね…私。」
静かに笑うと、三ツ谷の手が肩に回った。
グッと引き寄せられて顔を上げると、
優しく弧を描いている三ツ谷の瞳が
キラキラと街灯の光に揺れていた。
それが今まで見たことがないくらい
なによりも美しいイルミネーションに見えて息を飲んだ。