第26章 reindeer
12月24日のクリスマスイブは、
東マンの幹部を中心に、体の空いている者みんなで集まってバイクを走らせ東京中のイルミネーションを見た。
イブに特攻服姿で東京卍會の旗を掲げて
街中に騒音を撒き散らす暴走族。
それは彼らにとって一種のスペリオリティでもあり、
爽快的なスマッグでもある。
道行く人々やカップルは
顔を強ばらせていたりもしているが、
またかと言ったように慣れている顔をしている者も大勢いる。
さすが東京だ。
「ひぁーっ!すっごい綺麗だなぁ六本木も!」
さっきの渋谷も新宿も良かったけど
やっぱり六本木のイルミネーションも
なんだかオシャレで幻想的だと思った。
渋谷以外を仕切っている暴走族たちに
少なからずすれ違った可能性はあるが、
こんなに大勢で旗を掲げてチームで走っている奴らはいなかった。
いたとしても、イブやクリスマスは
周囲の人の多さや警察の多さで乱闘にはならないだろう。
この日ばかりは暴走族共通の暗黙のルールみたいなものだ。
家族で大事に過ごしている者も多い。
だから颯爽とみんなで夜の街を走ることが出来るこの日は大好きだ。
この日までに手術も退院も終えれて本当に良かったとランは胸をなで下ろしていた。
しかし実際はまだまだ安静にと医者には言われている。
結構体がなまってしまっていて、
激しく体を動かしたりすること自体、ラン自身もできそうにない。
だからバイクで突っ走るのが今唯一できる暴走族としての行動だ。