第25章 rat
帰り際、
「そうそう千冬!」
そう声を上げたランが
何かを千冬に渡した。
タケミチが不思議そうに覗き込むと、
千冬の手のひらで光っているものは、
ビーズと織り糸で作られた綺麗なストラップだった。
「お誕生日おめでとう千冬。」
「え?!お前今日誕生日なのか?!」
「え…あぁ…そーいえば…」
千冬はポカンとした表情で
手の上のストラップを見つめる。
イニシャルまで入っていて
とても上手に作られている。
「い…いいんすか?」
驚きと感激で言葉が見つからない。
なぜならそのストラップは、
生前、場地がしていたものに似ているからというのもあった。
そうか…あれはランさんが
いつかの場地さんの誕生日にプレゼントしたものかもしれないな。
手先が器用だって聞いたし…。
「そんなものしかあげられなくてごめんね!
時間がある時に急いで作ったんだ。
最近なかなか会えてなかったから渡せてよかったよ!」
「あ…ありがとうございます…!!」
深々と頭を下げる。
12月19日…
確かに自分の誕生日…
俺なんかの誕生日をわざわざ覚えててくれたのか?
もしかして…隊員全員のを覚えて…
「タケミチにも、誕生日のときは作るね!
皆の雰囲気やイメージに合ったストラップ作るの趣味なんだよね〜
千冬は空みたいな水色ってイメージなんだ!私の中ではね。」
満面の笑みでランはそう言った。