第25章 rat
「その…ごめん。できればなんだけど、
もう少し詳細を教えてもらえない?
さすがに1歩も外へ出ないっていうのは…
クリスマスだし…」
その言葉に、タケミチも千冬も内心、
そうだよな…。と眉を下げる。
「… ランさんも、約束とか予定とかいろいろあるとは思うんすけど…その…とにかく次の日になるまで一定の場所から出ないでくれればいいっす」
とにかく、大寿が行くであろう宇田川キリスト教会の礼拝堂にさえ近付かせなければ…
大寿はそこへ毎年夜遅くに行くと稀咲が言っていた。
「夜から深夜までです。
絶対に外に出ないでくれればいいんで…
お願いします。」
力強いタケミチの眼光を真っ直ぐ見つめる。
「…うん。わかったよ!
だけど、なにか力になれることがあればなんでも相談してね?協力するから」
「今回はこれが1番の協力になります!」
「っ…そうなんだ。ははは、わかった。」
ニッコリ笑うと、2人は安心したようにまたコップに口をつけた。
「あ、そういえば…
タケミチはどら焼き好きなの?」
「え?…まぁ…好きには好きっすけど…??」
なぜそんなことを聞くのだろうと疑問符を浮かべるタケミチとは裏腹に、ランはあの場地との思い出のどら焼きの店をタケミチから聞きたかった。
けれど…やっぱり聞かないでおこう。
なぜだかそう思い、そっと心の中に留めた。