第2章 rampant
「今日も決着がつかなかったね!
マイキー相手にランは凄いなぁ」
万次郎の腹違いの妹、エマはランにタオルを差し出す。
「ふー…まだまだこれからだよ。
あんな奴すぐに追い越してやる。」
「誰があんな奴だって〜?」
万次郎がごくごくと水を飲みながら近付いてきた。
「あんたなんかには負けないって話よ」
「ふはっ。俺だってお前になんか負けねーよ。
でもお前とやり合ってるときがいっちばん身体動かせていい運動になるわ〜。なぁエマ、どら焼き持ってきて〜」
「もう…はいはい。」
エマが行ってしまい、万次郎とランは2人きりになる。
この広い道場の真ん中で、2人は大の字になった。
「はーっ。久々にちょっと疲れたわ〜
お前、どんどん強くなってくな。」
「………まだまだだよ。」
好戦的な言葉が返って来るかと思いきや、ランからは力の籠っていない切なげな呟きが聞こえてきたので万次郎は顔だけランに向けた。
ランは天井を見上げたまま、哀しげに目を細めている。
その目は、ただ天井を見つめているようには見えない。
どこか、遠くを見ているような、そんな感じがした。