第21章 rise*
「ち、違うよ?隆、あのね、」
「ランお前…相手は誰だよ」
「えっ…いや、だからっ」
「浮気してたら……マジで殺すよ?」
カッと見開いた眼光とその言葉が異様な殺気を放っていて、思わず生唾をゴクリと飲み込んで怯む。
ゆっくりと三ツ谷の顔が離れていく。
「もちろんお前じゃなくて、相手をね。」
「っ…浮気なんてするわけないじゃん!」
「……ふぅん。ならいーけどね?」
そう言って、フッと笑って去っていってしまった。
「山田さんそこさー、半返し縫いのほうがいいよ」
「あ、はいっ!」
「部長〜コレ見てください」
「こっちもチェックしてください部長〜」
そんなやり取りに戻っている三ツ谷を見ながらホッと肩の力を抜き、ようやく安田さんの口を解放する。
「はぁ…はぁ…もうっ!
ほら!部長めちゃくちゃキレてたじゃないの!」
「それは誤解するようなこと大声で言う安田さんが悪いんでしょー!だいたい私はこのマフラーは大切な家族にあげようと思ってんの!」
「…あれ、そうなの?」
ポカンとした表情の安田さんの耳がピクっと動き出す。
「ねぇなんか、あいつの声しない?」
「ん?だれ?安田さんて相変わらず耳いいねぇ」
ランが苦笑いするのと同時に、安田さんは険しい顔をしてドアの方へ行き、ガララッと開けた。