第21章 rise*
とある日の放課後、ランは三ツ谷の中学の部室に転がり込んでいた。
たまにこうして勝手に押しかけては勝手に手芸部を見学…というより三ツ谷を見学するのが楽しくて仕方ない。
初めの頃は、他の部員は迷惑と困惑の表情を浮かべていたが、三ツ谷の彼女なのだということで誰も何も言えなかった。
その上、ランは女子にはとてつもなく優しいのでいつの間にか皆とお友達のようになっていた。
もちろん手芸部なので、三ツ谷以外は全員女子だ。
中には少なからずヤキモチを妬いている者もいるだろうが、ランは一応は三ツ谷や皆の邪魔をしないように自分まで裁縫道具を持ってきては、周りに習ってあれこれ作っている。
「ランちゃん、すごい上手になったねぇ。
ていうか、すっかりうちの部員だね」
「ははは。私もこの中学が良かったよ〜
転校しちゃおっかなぁ〜♪」
冗談を言いつつも、ランはすっかりここの部員と化してしまっている。
こうして放課後毎日のように三ツ谷の姿を見ながら、そして悪い虫が付かないように偵察しながら、裁縫を学べるなら本気で転校したいくらいだ。
といってももう冬だし、
あと数ヶ月で中学も卒業…
タケミチに教えてもらった未来の情報によると、
自分はあのハロウィン抗争のあと、三ツ谷に振られ、今度こそ祖父に連れられて東北の高校に行ってしまっていたようだが…
どうやらそうならなくて済んだようで、安堵していた。
それならば、
絶対に、なにがなんでも三ツ谷と同じ高校に進学したい。