第21章 rise*
「お、お疲れ様です!!」
千冬は急いでバイクを降りて頭を下げる。
「どら焼きズルい〜っ!!」
そんな第一声を発するランに、無言で袋を渡す万次郎。
そして袋をのぞき込み、満面の笑みになるラン。
「っあ〜!いっぱい入ってる〜!
たい焼きも入ってる〜♪
よし!千冬!一緒に食べよう!」
「え…あ…」
「万次郎もほら行くよっ
千冬が話があるんだって!」
万次郎はどこか見透かしたような目で千冬を見た。
目が合った千冬はそのオーラにドキリとなる。
「大丈夫か、千冬」
「マイキーくん…っ」
ゆっくりと近づいてきた万次郎が
ガっと千冬の頭を自分の肩に押し付けた。
沈黙が流れた。
その様子を、ランは優しい瞳でじっと見つめていた。
「大丈夫じゃ、ねぇよな。
俺もまだ…ダメなんだ…」
耳元で聞こえる、その悲しく儚げな万次郎の言葉に千冬の目からまた静かに涙が流れた。
「……行こ。」
しばらくして、ニコニコ顔のランに手を引かれ、
その後ろをどら焼きを頬張りながらモグモグと口を動かしてついてくる万次郎。
この2人に挟まれている千冬はいろんな感情が押し寄せていたが、自分の意思はキッパリ伝えようと心に決めた。