第21章 rise*
着いた先は、ランと万次郎が住む佐野家だった。
もちろん千冬は初めて来たので緊張してしまう。
渡したいものがある。
そう言って車庫に連れられた。
「これ、今日から千冬のもの。」
ニッコリ笑って言うランの横にあるものは、明らかに場地のバイクGSX250Eだった。
「え……」
「今まで圭介が乗ってたゴキだよ。
きっと圭介は、千冬に持ってて欲しいと思うから。」
千冬の大きく見開かれた瞳が揺れ、たちまち潤みだした。
「ありがとう…ございます…」
ゆっくりと跨ってみると、
場地の温もりが残っている感じがした。
「場地…さん……」
思わずそう呟いた時、
「おーっ!!似合ってんじゃんお前」
突然の声にビクリとし、視線を向けると
万次郎がどら焼きを食べながら突っ立っていた。