第21章 rise*
墓石の前で、いつまでも涙を流してしゃがみこんでいるランに、千冬は呼びかけた。
「ランさん。」
そして、手を差し伸べる。
その手首にはまだ切れてないミサンガがしてある。
「七転び八起きですよ。
立ち上がり続けりゃ勝つんです。」
"人生は七転び八起きだ。
立ち上がり続けりゃ勝つんだよ"
そう言っていた場地の姿が千冬に重なった。
ランはゆっくりとその手を取り、立ち上がる。
場地の手と同じように、あったかいと思った。
「覚えてますかランさん。
あの日、俺に、胡蝶蘭くれたんすよ。
花言葉は…"幸福が飛んでくる"」
そう…あの時俺は…
場地さんとランさんの幸福を祈った。
今日、千冬が持ってきた花は白い胡蝶蘭で、
ランが持ってきた花もピンクの胡蝶蘭だった。
「場地さんは昔から…
ランさんと東マンの幸福を望んでましたよ。
だからランさんは、絶対に幸せにならないとダメです。」
そう言って優しく笑う千冬に
ランはハッとする。
千冬の揺れる瞳は、
あの頃の場地にそっくりだと思った。