第21章 rise*
「でも俺にもしもの事があったらさ、千冬ぅ、
お前、ランのこと、頼むよ。」
その言葉に目を見開いた。
「…え?」
「な?」
ニッと八重歯を出して笑う場地さんに、
俺は「はい」と大きく頷いた。
「で、あいつがもしも悲しんでたり、挫けそうになってたら、何度でも言ってやってくれ。お前の口から、あの言葉を…」
任せてください。
場地さん。
俺がこれから、
場地さんのように、何度だってそれを言う。
だけど、俺は場地さんの代わりにはなれねぇ。
ランさんを支えられるのは…
場地圭介は…
たった一人しかいない。
俺じゃダメなんだ。
幼い頃からランさんを支えてきた、
場地圭介じゃなきゃ。
「おし、千冬!ちょっと付き合え!」
「はい…でもどこへ。」
「どら焼きだよ!どら焼き!」
「・・・」
こうしてよく、ランさん用のおやつを買いに付き合わされた。
だから俺はランさんのお気に入りだったそれがどこのものなのか知ってる。
でも、あえて言わない。
あの味は、ランさんにとっていつまでも、
場地さんとの2人だけの思い出として
ずっと大切にしていてほしいから。