第21章 rise*
「じゃあ俺、そろそろ帰りますわ」
2人の邪魔をしてはいけない。
てかこれ以上、見ていられない。
「え、もう帰んのお前」
「あ、じゃあ千冬、私と連絡先交換しよう。
何かあれば何でも必ず私に連絡してね!」
相談役と取締役、そして情報屋でもあるような立ち位置らしいランさんとひとまず連絡先交換した。
俺は、どこまでも場地さんについて行くことを決めた。
東マンというよりも、場地さんに命を賭けることを決めた。
東マンメンバーになってから落ち着いた頃、ずっと気になってたことを俺は聞いてみた。
「場地さんて、ランさんに惚れてんすよね?
なんでもっとガンガン積極的にいかないんすか?」
その言葉に焦って狼狽するかと思いきや、
場地さんは逆に冷静沈着な態度で言った。
「あいつは俺のもんにはできねぇ。
東マンみんなのランだかんな。
俺はあいつの笑った顔さえ見てられればそれでいい。」
あー…嘘ついたなぁこの人。
俺には分かった。
ランさんが三ツ谷くんのこと好きなの分かってるんだな。
気持ちを無理に振り向かせたり奪うくらいなら、心の底からランさんに幸せになってほしいと思ってるんだ。
どれだけの切なさを噛み締めていることだろう。
本当は自分のものにしたくてしたくて
たまらないくせに。
場地さんは、よくランさんの話をしたけど、ランさんの話をする時はいつもの笑みにほんのり切なさと痛みを孕んでいるのを見抜いていた。
その僅かな違いはきっと俺にしか分からなかっただろう。