第20章 rage
「場地さんっ!!!
稀咲てめぇ何をしたァ!?」
「見てたろ?俺は何もしてねぇ」
千冬も顔面蒼白になって駆け寄ってくる。
「場地さんっ!!
っ…血が…刺された?!
刺されたんすか?!いつ…!」
かすり傷だ。
そう言っていたが、実際は一虎に刺されていて重症だったということだ。
「やっぱヤベェ奴だな、一虎は。
そうか!場地をバルハラに引き抜いたのはこうやって寝首をかくためか!
ねぇ?総長?」
そう言い放ったのは稀咲。
ランはハッと我に返った。
……稀咲は万次郎を煽ってる。
ここで万次郎が一虎を殺せば
稀咲の思う壷…
圭介が死んだら尚更…
どうしよう…
万次郎を止められるのって
私しかいないんじゃ…
「殺したかった…ずっと…
てめーが年少から出てきたら
真っ先に俺が殺そうと思ってた…」
万次郎がゆっくりと一虎に近づいて行く。
「そんな俺を諭し続けてくれたのが場地だった。
場地が言ってた。
"一虎はマイキーを喜ばせたかった。
だからあいつは受け入れられない。
たとえマイキーの兄貴を殺しちまっても
自分を肯定するために
マイキーを敵にするしか無かった…"
ってよー…」
万次郎の表情は
今まで見たことがないくらいに感情がない。
その場にいる全員が、その異様な空気に息を飲む。