第5章 refine
「それに比べて……」
「あいつはおっせぇなぁ…」
皆が一様に後ろを振り向くと、1人だけ原チャでノロノロと走っている万次郎がいた。
「マイキーよー、いつまで原チャ乗ってんだよ!?総長だぜ?」
「いい加減バイクに替えろや」
「いいんだよ、オレの愛車バカにしてんの?
バブの50ccモデル!ホーク丸だ!」
万次郎はドヤ顔で返答する。
「いやいや、なにがホーク丸だよ…
どー見てもただの原チャリじゃねーか。」
「原チャはコールできねぇかんな」
「空ぶかしたつもりで急発進しちまうやつとかいるし」
「それマイキーじゃね?」
「おせーから問題ねーけどっ」
「ま、バブにしか乗りたくねぇってゆーけどよ、譲ってくれる先輩いねぇししょうがなくね?」
万次郎はバイクだったらバブにしか乗りたくないらしく、今でも原チャに乗っているのだ。
その時…
「オイオイオイオイ」
「マジか!?」
「特攻服着て原チャ転がしてるチビっ子がいんぞ!?」
特攻服を着た他の族連中が横並びに走ってきた。
「どっこのシマで流してんだぁコラ!」
「ん?東京卍會?聞いたことねーな」
「ガキのままごとなら地元でやってろや」
「ハマに来んな」
全員睨み合う形となってしまい、異様な空気が流れる。
男たちは万次郎の原付を見てバカにしたように笑っている。
「せっかく出会ったんだからよー、その原チャブッ壊してやるよ!要らねぇだろー?」
「オレのホーク丸に指一本でも触れたら殺すよ?」
男たちはぴくりと眉を動かし押し黙ってしまった。
万次郎のこの無の表情はどんなものでも威圧する、得体の知れない不気味さがある。