第5章 refine
「海だぁあああ!!」
「やべえ〜きもち〜!」
「潮風さいっこ〜!」
さっそく特攻服を着て皆で海沿いをツーリングする。
しかし皆、颯爽と前を行くランに驚嘆の色が隠せない。
ランは最近ようやくMYバイクを手に入れたのだ。
「うひょーっ!!やっぱランのブラックバードすっげえええ!!」
「さすがホンダのブラバだ!」
「アレ新作だろ?!CBR1100XXスーパーブラックバード!」
「やべえな!どんどん差が開いてくぞ…かっけええー」
「いっつも三ツ谷の後ろに乗ってたから、あいつのバイク乗る姿初めて見たけど…まさかこんなに似合っちまうとはなー。」
「マジであいつレディースも創りゃいーのにな。あとで乗っけてもらおーぜー!」
ランが、頭のスカーフと黒い特攻服の長い羽織をたなびかせて颯爽とバイクで突っ走る様はそこらの男よりも何倍もかっこよく見えて皆の目は神々しい何かを見るように輝いていた。
ランのバイクは海外で販売されていたモデルの国内導入版であり去年あたりに発売された新作だった。
CBR1000Fがモデルチェンジするかたちで登場したCBR1100XXは、世界最速の座を目指して開発されたモデルであり、
「スーパーブラックバード」という呼び名は、当時アメリカ空軍が採用していた超音速の高高度偵察機であるSR-71ブラックバード(ロッキード社)に由来するものだ。
マッハ3で飛行するブラックバードを超える、最速モデルなのである。
ランとしては、いつまでも三ツ谷の後ろに乗っていたいのは山々だったが、三ツ谷には申し訳ないと思っていたし、そろそろ自分のバイクが欲しいと思っていた矢先に東北の祖父から母の保険金が大量に振り込まれたため、思い切ってこれを購入したのだ。
これなら天国の母も許してくれるんじゃないかと思った。