第18章 rapport
「…隆は…いつもズルいよ…」
「は…なん」
「ズルい」
そう耳元で囁いて
ギュッと腕を強めるランに、
三ツ谷もフッと笑ってすっぽりとその体を抱き包んだ。
あー…やっぱ大好きだ。
こいつのこと…。
「でもラン…あんまり無理すんなよ?」
「え?」
「こうして甘えてくれよ?いつでも…。」
体を離して三ツ谷と目が合う。
"ランちゃん…。あまり無理しないでね?"
"ランちゃん…隆と同じ目をしてる"
"昔から、誰かに甘えたことがない目よ"
三ツ谷の母に言われた言葉を思い出して
息を飲んで三ツ谷の瞳を見つめた。
その瞳は、ユラユラとオレンジの光が揺れていて、言葉では言い表せない、どこか儚げな脆さと刹那さを孕んでいるように見えた。
その瞳の奥には、同じ目をした自分が映っている。
私は……
こんな目をしているんだ……
「……じゃあ隆…。
隆も…、私に甘えてね?いつでも…。約束。」
一瞬驚いたような三ツ谷の目は、
徐々に細まって弧を描いた。
「……わかったよ。…約束…な。」
優しい声色とともに出された小指に
ランは小指を絡めた。
するとそのままグッと小指を引き寄せられたかと思えば、また唇が重なった。
オレンジの夕陽はもう、沈んでしまっていた。