第18章 rapport
「10月31日は、てめぇら東マンを嬲り殺す。
それだけだ。」
「一虎」
「それだけだ。」
カッと目を見開き、有無を言わせぬ態度で強く言い放った一虎に、三ツ谷は何も言わずに目を細め、逸らさぬままランたちを呼んだ。
「帰るぞ」
その声に反応するように、
ランの手からゆっくりと場地の手が離れていく。
その手を掴みたい…
その衝動をグッとこらえて、ランは立ち上がり、ルナマナの手を引いて三ツ谷の方に近寄った。
ちらりと振り返ると、場地はまだ1人ポツンと猫の前にしゃがんでいる。
その背に思わずハッとしてしまった。
なぜだか泣いているように見えたからだ。
「け、圭介っ!」
言葉を用意していた訳では無いのに、思わずそう叫ばずにはいられなかった。
今ここで、思い切って手を伸ばし
引き寄せたら…
戻ってきてくれるだろうか?
もうどこにもいかないでくれるだろうか?
ゆっくりと振り向いた場地は…
敵に向けるような好戦的な笑みを浮かべていた。
「っ……」
「行こう」
三ツ谷に手を引かれ、ランは唇を噛み締めながら背を向け歩き出した。
「ラン!エスペケは元気だぜ」
最後に聞こえたその言葉に、
歩きながらバッと振り向く。
場地の浮かべている笑みは、
やっぱり泣いているように見えた。