第16章 rational
「ふふ…また新しいバイブルの1ページかもこれ」
そう呟くと、三ツ谷が呆れたように言った。
「またそれかよ」
「うん。ふふふ」
嬉しそうに笑っているランに目を細め、最後に残ったイチゴをランの口に押し込んだ。
「ほら、もう行くぞ」
手を引かれ、会計を終わらせて外に出た三ツ谷はチラとランに視線を移すと、まだ口の中にイチゴを入れているようだった。
「は…なにしてんだか。また奪われてぇの?」
小さく頷くランが心底可愛くて、三ツ谷はため息を吐いてから噛み付くように口付けをして口内のイチゴを絡めとった。
あのお弁当のときのことを思い出してランは照れたように笑った。
イチゴを咀嚼し飲み込んだ三ツ谷は
「まるごとかよ…」
と呟いてから、
「これもバイブルに追加しとけ」
そう言ってランの頭をクシャと撫でた。
「一応確認だけど…場地に…
キス以外のことはされてねぇよな?」
その言葉にランの鼓動が跳ねあがる。
え…なんでキスされたことバレてんの?
「さ、されてないよ…」
「そ…ならいいけど…いや、よくもねぇか…」
どこか悔しそうに顔を歪める三ツ谷に申し訳なさが募る。