第16章 rational
「ん……あれ……」
タケミチのぼやけた視界に煌々と輝く月が見える。
そっか、俺…
稀咲に殴られて気失ってたんだ…
なんで手ぇ出しちまったんだろ…
稀咲が参番隊隊長…
俺、東マンのトップになるとか言ったけど…
もう無理なのかな…
ふと横を見ると、にっこり笑っている万次郎がいた。
「気付いた?」
「ま、マイキーくん?!」
「タケミっち…稀咲が気に入らない?」
「え?!いや、そのっ…」
万次郎は夜空を見上げて切なげに目を細めた。
「組織をデカくするのはしんどいね…
新しい風入れたら、出てっちゃう奴もいる」
「あ…」
稀咲と場地を思い浮かべてタケミチは顔を歪めた。
「夢への道は遠いな…」
そう言って立ち上がり、
なおもまだ夜空を見上げている万次郎。
「夢……」
「頼みがあるんだ…タケミっち…」
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