第16章 rational
「行っちゃダメ圭介」
「欲張りだよラン。
お前にはマイキーもドラケンも三ツ谷もいんだろーが」
ジィと上目遣いで睨む一虎の威圧感に一瞬鼓動が跳ねた。
「放せ、ラン。」
バッと場地に振り払われた。
フッと鼻で笑う一虎。
「けい…すけ…」
「…っ、そんな顔で見んじゃねーよ。
次会ったらマジで犯すからな。」
「ハハッ。場地怖え〜っ!
もう場地の前には姿を現さないことだな、
ラン。」
パラパラと手を振って踵を返す一虎。
その後を追いかけて進んでいく場地。
一瞬振り返って、目が合った場地の表情が
今まで見た事がないくらい哀しげで儚げで…
そのなんとも言えない雰囲気にどこか威圧されてしまい、ランはその場を動けなくなった。
1人になった静寂な暗闇の中で
さっきまでいた目の前の存在の残像を
ただただボーッと見つめていた。