第16章 rational
「一緒に、戻ろう?みんなのとこ…」
その優しい言葉に思わず頷きそうになる己を懸命に振り払い、場地は最後の温もりを確かめるようにもう一度強く抱きしめ、そして放した。
「……圭介?」
「ごめんな、ラン」
「え……」
その時…
「よーう、お二人さん。」
背後からの声にランはバッと振り返る。
「あ…ごめん、邪魔したかなー?」
ニコッと笑う整った顔立ち。
カランと鳴る鈴のピアス。
首筋にトラのタトゥー。
あの頃より伸びた金メッシュの髪の毛。
「一虎…っ…」
「よっ!ラン。久々すぎなのに覚えててくれて嬉し〜!やっぱ俺の言った通り、良い女になってるじゃん?」
「…どうして…ここに…」
「どうしてって、場地を迎えに来た。」
フフと笑うそのベビーフェイスは昔のままなのに、どことなく黒い影が見える気がして目を細めた。
「迎えに来たって何?圭介は東マンの」
「辞める宣言してきたんじゃなかったの場地?」
「ああ。してきたよ」
そう言って一虎の方へ歩き出す場地の裾をランは掴んだ。