第16章 rational
「なんで…んな事言うんだよ馬鹿野郎っ」
奥から絞り出したような苦しげな声にランは眉を顰める。
「……お前…こんな震えてるくせに…。
怖ぇんだろ…。相変わらず強がりだな」
「怖いよ!!圭介が行っちゃうことが!!」
「…っ……」
その言葉に、ハッとなった場地の涙腺がつい緩んだ。
自分にどうされるかを怖がって震えていると思っていたランからの思わぬ発言。
(くそ…っ…頼むからもうやめてくれ…
俺は…俺が…ぜってー行かねぇと…)
場地はランの温もりを感じながら、奥歯を噛み締めて耐えた。
ずっと、抱き締めたいと、キスしたいと
そう思っていた存在。
今、こんな形でそれが叶ってしまったことが悔しかった。
これが、"最初で最後" かもな…。
傷つけることも言って、
傷つけることもしたのに…。
どうしてここまでして自分を引き止めてくるのか。
どうしてここまでした自分を嫌いにならないでくれるのか。
わからなかった。