第16章 rational
「ふ……あれ?キレて殴らねぇのか?」
「……。…ないで…」
「…あ?」
「行かないで…圭介…」
「っ…、てめぇ…この期に及んでまだ」
ランは突然場地の手首を掴むと、
取り出したミサンガをキツく縛り付けた。
「なんだよこれ」
「東マン全員に作ったんだよ。
まだ圭介にだけ渡せてなかったの。
だって……」
会えてなかったから…
と寂しげに言うランに、一瞬眉を顰める。
しばらくそのままの体勢で沈黙が流れた。
「…エスペケはあのあと無事戻ってきたぞ。」
「!」
顔を上げると、優しく笑っている場地がいて、
ランは目を潤ませる。
「じゃあ圭介もお願いだからさ…戻ってきてよ」
絶対に外せないように強く縛って巻き付けたミサンガの手首を掴んだまま言うランに、場地はあからさまにため息を吐く。
「だからお前さ、俺の話聞いてたか?
俺はお前のこと」
「どうされてもいいよ!!
圭介が行かないでくれるなら、どうされてもいい!」
目を見開いて唖然とする。
「… ラン」
「圭介になら、何されてもいいよ…
私前にさ、そう言ったじゃん」
「っ…」
「だからさ、お願い…行かないで?
だって圭介、言ったじゃん。
ずっと変わらず私のそばにいてくれるって!!」
その瞬間、場地はランをグッと引き寄せて腕の中に閉じ込めた。
「っ!けい…」
頭に手を置いて自分の胸に押し付け、キツく抱き締める。