第16章 rational
そいつは突然マイキーの前にドンと座った。
「なんだあいつ?!」
「総長に背向けて座りやがった!」
「なんだてめぇコノヤロー!」
「調子に乗ってんじゃねえぞ!」
「おい挨拶しねぇのか?!」
「なんなんだあのやろー!」
「よく聞けてめぇら!!
俺の後ろに座ってる方が!!
新参番隊隊長!稀咲鉄太だ!!!」
デカい方が声を張り上げ、辺りは騒然とする。
タケミチの鼓動が跳ね上がり、
頭に血が上った。
こいつが!あの稀咲!?
いきなり目の前に!!
どうする?!
「あいつ見たことあんぞ」
「メビウスの奴じゃね?」
「なんでメビウスがここにいんだよ?!」
「引っ込んでろやメビウス!!」
「「引っ込め!!引っ込め!!」」
「黙れ!!!マイキーの決めたことだ!!
文句がある奴ぁ前に出ろ!!!」
ドラケンの怒鳴り声に一気にしんと静まり返り、
今度は万次郎が声を張り上げた。
「うちはこれから芭流覇羅(バルハラ)とぶつかる!
新興勢力バルハラはメビウスなんて目じゃねぇほどデケェチームだ!!
勝つために東マンも勢力を拡大する!!
ここにいる稀咲鉄太はメビウスで俺らの世代をまとめてた男だ。バルハラと揉めるために稀咲は必要だ。」
ランは万次郎の斜め後ろから稀咲の背中を見つめる。
先日、稀咲鉄太が万次郎の元を訪れたのを知っている。
元々、メビウスのやり方が気に食わなかったため、東マンに協力したいと申し出ていたのだ。
それを万次郎はもちろんランにも報告してきた。
ランがもう少し考えた方がいいんじゃないかと言ったにもかかわらず、万次郎は稀咲を引き入れた。