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progress ~東リべ卍~R18~

第16章 rational




「でもそれだけな。
俺もちゃーんと味わっておかねぇとだから。」


そう言って生どら焼きを咀嚼しながら、
家の中を見回す。


子供の頃から、何十回とランが来ていたこの家の中を、ランの残像がまだ笑顔を振りまいているような空気を感じた。

笑い声すら聞こえてきそうだ。



ガララッー…


思い切り窓を全開にする。


「早く…抜けてくれ……」



楽しかった…
今まですっげー楽しかった…

でも、楽しすぎるのは、
自分自身を惑わせる。


しょっちゅうウチに来ては
笑って馬鹿やってふざけ合ってたラン。

ここへ来る度そんなランを
どこか自分のものにしているような優越感があった。

でも……


もうそんな幻想は終わり。



俺には……


やらなきゃなんねーことがある。


俺が…ぜってーやんなきゃなんねーこと。



千冬もごめんな。

今までこんな俺についてきてくれて
ありがとう…。




猫がゴロゴロ喉を鳴らしてまとわりついてくる。

こちょこちょ撫でて目を細めた。



やっぱ、裏切らねぇのは人間以外の動物だけだ。




"何されても、嫌いになんて、ならない"



「フッ…馬鹿だなあいつ…」



俺がお前のことどうしてぇと思ってきたか、
知らねーくせに…。


それから俺が今後、
どうするのかも…。






場地は最後の一欠片を口に放りこんで飲み込んだ後、目を瞑り、フーっと長い息を吐いてから目を開いた。

その目は、鋭利な切っ先が光ったような
玲瓏な眼差しを帯びていた。


ポケットに手を突っ込み、
あの日のお守りを強く握りしめた。


あの日、ランが置いていった胡蝶蘭は
もうすでに枯れかかっていた。
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