第16章 rational
でも……
「ならないと思う。」
「あ?」
「何されても、嫌いになんて、ならない。」
キッパリ言い放ったランの瞳が真剣な色を孕んでいて、場地は心臓が射抜かれる感覚がした。
気がつくと、場地は表情を変えて
目を逸らし、ランにいつものどら焼きを投げていた。
ランはそれをキャッチして
嬉しそうに目を細める。
やっぱりなんだかんだいって、
いつも常備してくれてるんだ。
ランは、買ってきたコンビニ袋から生どら焼きを取り出して場地に渡す。
2人同時にそれを食べ始めた。
食べ物の匂いを嗅ぎつけてか、
野良猫たちが3匹も入ってきた。
2人してそれを分け与える。
いつの間にか笑顔になっていた。
「やっぱ動物っていいね。癒される…」
「ああ…。この世で裏切らねぇのは人間以外の動物だけだからな…」
「…裏切らないの……あぁ…確かに…。」
ランはその言葉に妙に納得しながらも、この時はあまり深くは考えていなかった。
「てかさ… ラン…」
「ん?」
「お前…ここにいちゃダメだろ。」
「は?なんで?」
ランは何食わぬ顔で猫にどら焼きをちぎっている。
「だってお前……」
ふっと場地に視線を移すのと同時に、
その言葉が降ってきた。
「もう、三ツ谷のもんなんだからよ」
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