第15章 relent*
「焦るよ…」
「え?」
採寸しながらポツリと言った三ツ谷の言葉に首を傾げる。
「ランは多分、気付いてねぇのかもな。
どんどん大人の女になっていく。
そんなお前に…なんだか俺は焦るよ」
「・・・」
何言ってるの…
どんどん成長して、大人の男になっていく隆に焦っているのは私の方なのに…
私も成長…してたの?
大人の女に…?
「きっとランはこの先も、もっともっと綺麗になる。」
そのセリフにハッとする。
以前誰かに同じことを言われたような気がした。
誰だったっけ…
そうだあれは……
羽宮一虎だ。
あれは確か…
中一の夏、みんなで海に行った時。
"ランは水着じゃなくてもイケてるよ。
きっとこれから、もっともっとイイオンナになる。"
"…は?なに、それ。"
"冗談抜きで、お前はイイ女だよ。
俺と付き合わない?"
"つまんない冗談。
一虎はさ、イケメンなんだから彼女の1人や2人作ろうと思えばすぐ作れるでしょ"
"冗談じゃないって言ったばっかなのに〜"
そのときのやり取りが、なぜだかつい昨日の事のように蘇ってきた。
あの整った笑顔も…。