第15章 relent*
三ツ谷の家に来ると、
本当に誰もいなくて2人だけだったので少しばかり緊張感が走った。
自室には布やソーイングセットだけでなく、服のデザインをまとめたスケッチブック、デザイン資料のファイル、服・デザイン関係の本が揃っている。
勉強熱心だから、時間がある時にデザインや試作をしているのだろう。
三ツ谷は今では手芸部の部長だ。
学業・部活動・家事・育児・東マンの活動で忙しい生活をしているはずなのに、隙間時間すら一切無駄にしない努力家なのが見て取れる。
「不良」と聞くと自堕落に過ごすイメージがあるが、三ツ谷は日常の一瞬一瞬を大事にする人だとランはいつも感じている。
そんなところにも惚れたのだ。
夢はデザイナーというだけあって、尊敬する人はココ・シャネルらしい。
でもランの尊敬する人は
昔も今も三ツ谷隆だ。
「さてと…じゃー採寸させて」
「はーい。」
両腕を広げると、メジャーをそこかしこに当てられる。
当然ながら、バストやウエスト、ヒップにも這わされ、どことなく気恥しさで顔が熱くなった。
三ツ谷の手が、指が、
自分の体に触れる度にお腹の辺りが苦しくなるような、とにかく鼓動がうるさく自身の中を支配した。
しかし三ツ谷は至って真剣な顔でメモをとっていっている。
私1人バカみたい…
心の中で嘲笑いながら
妙な気分を懸命に振り払った。