第15章 relent*
狼狽えている三ツ谷に、あ〜んと言って卵焼きを口に押し込んだ。
戸惑いがちに目を逸らして咀嚼している彼をジィっと凝視する。
「…どおー?」
「ん。うまいよ。…でもそんなに見るな!」
「えぇ〜そりゃあ見るでしょ」
「じゃあ今度は俺の番な。ほら、あ〜ん」
意地悪そうな笑みを浮かべて
今度は三ツ谷が唐揚げを差し出してきた。
「えっ。でもこういうのは女の子が男の子にするものだって書いてあ」
「ごちゃごちゃうるせーな。ほら、口、開けろ」
もう…と言いながら、
「あー」と僅かに口を開けると
なぜか近づいてきたのは唐揚げではなく三ツ谷だった。
いつの間にか三ツ谷の唇が重なっていて
開いた口には舌が侵入してきていた。
そういえば…
最初にしたキスも…
"ほら、口、開けろ"
そのセリフだったことを思い出す。
そんなことより…
隆はキス魔なの?!
不意打ちばっかり…!!
なんだか、まんまとされるがまま面白がられている気がして少し悔しくなった。
思い切ってランも舌を絡ませる。
さっき三ツ谷が食べた卵焼きみたいな甘さが口内に広がっていった。
ゆっくりと離れた唇からは
銀の糸が2人を繋いでいた。