第13章 regret
その頃…
三ツ谷は先程の万次郎との会話を反芻していた。
やっぱり…
ランに正直に気持ちを打ち明けたい。
ついしてしまったあのキスのホントの意味も…
ちゃんと言いたい…
"自分の範囲内でしか物事を考えられない
視野の狭い奴"
万次郎にそう揶揄された。
ランにも東マンの皆にも悪いと思ってたんだ。
自分の気持ちを優先してしまうことは。
抑えてきた自分の感情を
どこまで曝け出していいのか、
どうなってしまうのかも不安だったし…
でも…そっか、そうだよな。
これが視野が狭いって話なんだ。
これが、俺が自分の範囲内で思考している証拠だ…
それに、どことなくマイキーに遠慮してたのも確かだ。
でもそのマイキーがああ言ってきた。
自分の感情を差し置いてまで俺に…
"俺は好きだよ。ずぅっと俺だけの女でいてくれることを望んでる。"
"俺は勝てねぇ勝負はしねぇ主義なんだ。"
"ランは三ツ谷のことが好き。
お前だって気付いてるだろ。"
"俺もお前も、今は同じ立場なんだぜ?
てことは、誰がランに手ぇ出そうが文句言う資格は俺にもお前にも誰にもねぇだろ?
たとえ手ぇ出すのが、マイキーでも場地でもな。"
ふいに、ドラケンに言われた言葉も
脳裏に反芻した。
"それでコロッとランがいっちまっても、お前は誰も責める資格はねぇよな。
でもそうなった時にお前が手ぇだしたら、殺されるのはお前だよ、三ツ谷。"
"俺の言いてぇこと、分かるな?
気がついたときゃ遅せぇんだよ"
万次郎から貰ったお菓子を嬉しそうに食べ漁っている妹たちを一瞥してから、
三ツ谷は思い切ってランに電話を掛けた。
「……あれ…出ねぇな…」
長いコール音のあと、ようやく切り替わった音がした。