第12章 reconcile
「今までの関係性を崩して何かが変わるリスクに賭けてらんねぇだろこんな個人的なことで!今だって大事な時期だし!
ただ俺は東マンはこれからも今までみてぇにちゃんと機能しててほしいだけだ!
だいたいなぁ俺にだってプライドがあんだよ!
あいつに… ランに…
他の奴ら以上に甘えちまうのが目に見えてんだよ、だから」
「謙虚な奴だな…」
少し驚いたように目を見開いて口を開けている万次郎が、ポツリと呟いた。
「いや、違うか…
こーゆーのって、なんて言うんだっけ。
あー、"井の中の蛙" か…。お前は。」
「…あ?」
「自分の範囲内でしか物事を考えられない、視野の狭い奴のことだよ」
「…っ……。」
眉間に皺を寄せる三ツ谷をしばらくジッと見つめたあと、万次郎はくるりと踵を返した。
「とにかくさ…俺、あいつの悲しそうな顔見るのだけはぜってぇ我慢ならねぇの。」
万次郎は少しだけ振り返り、
生気の篭っていないような、しかし殺気立っているような眼光を向けてきた。
「次、あいつのこと傷付けたら、殺す。」
「……。」
異様なオーラが滾っているようにも見える
その小さな背は
たちまち雨の中に紛れ、そしてバブの音と共に消えていった。