第12章 reconcile
「俺は勝てねぇ勝負はしねぇ主義なんだ。
無敵だから、1度でも負けを作りたくねぇの」
「は?」
「ランは三ツ谷のことが好き。
お前だって気付いてるだろ。」
三ツ谷は口を噤んで目を逸らした。
「あんなアホみてぇに一途な奴と、手を伸ばせばすぐ手に入っちまうお前、相手にしても俺ふっつーに負ける。てか多分もう負けてる。」
"負けてる"
そんな発言を万次郎の口から初めて聞いた
三ツ谷は目を見張る。
「けっこー頑張ったんだけどなっ」
眉を下げて寂しげに笑う万次郎。
「……なんでなんも言わねぇの?
じゃーお前はランのこと、なんとも思ってねーってことだな?それだったら俺はあいつの想いを無視してねじ曲げるしかな」
「…そんなこと…言ってねぇだろ」
「あ?聞こえねぇよ」
「好きだよ!めちゃくちゃ!」
三ツ谷が視線を落としたまま声を張り上げた。
「でも仕方ねぇじゃん!
それでなくても忙しいのに俺のことになんか構わせてられるかよ!
ランには東マンの奴ら全員のランでいてもらわなくちゃ!
もしもこれきっかけで何かおかしくなったらどうする?どっかから妙な嫉妬持った奴が湧くかもだし他にもいろいろ考えるべき点はあんだろ!?」
外は雷まで轟いてきていた。
しかし、それに負けないくらいの声で、三ツ谷の気迫は凄かった。