第12章 reconcile
でもそんなとき、
誰でも皆、辛い、苦しい、悲しい
そんな感情が湧くんだ。
幸せを追い求めることがこんなにも辛くて
それでも幸せを感じないと生きていけないのが人間なんて皮肉なもんだよ。
途方もねぇジレンマみてぇじゃん。
だったら無理やり軌道をずらして
幸せをそこに置いたらいいんじゃねぇの。
「なぁ… ラン。」
「んー?」
「好きじゃねぇとかほざく奴にキスされんのは辛ぇよな」
「へ?」
バンバンと花火の音が響く中、
こちらを向いたランに万次郎は
フッと笑う。
「……なんて言ったの今?」
「好きだって言ってくれる奴にキスされんなら、嫌じゃねぇよな?」
「?…え?」
グッとランの後頭部を引き寄せ、
目と鼻の先で見つめる。
ランはギラギラと花火が映っているその真剣な瞳を凝視しながら疑問符しか浮かべていなかった。
「…万次郎?」
「俺、お前のこと好きって言ってんじゃん何度も」
「うん…?…聞いてるよ?」
「………。」
あぁ…そっか…
やっぱりお前は…
"完全に" 俺のことをそういう目で見てねぇんだな。
万次郎はゆっくりとランの唇に唇を近づけた。
そして、口付けはせずに、
ランの口の端を猫のようにペロリと舐めた。