第11章 radiant
「自分が邪魔だと…嫌だと…思う存在をね、この世から全部消し去りたくなるの。私の手で……」
嫌いな男、クズな男を皆殺しにしたいとか…
好きな人にだけ囲まれていたいとか…
そんなふうに思う時がある。
その黒い衝動は
幼い頃から持っている。
「たまにね、夢も見るの…
ひたすら暗い海の底を歩いててね、すごく不安になる…
目指す指針が何も見えなくて、どこ歩いてるかもわかんない。
足元も暗くて見えなくて答えも目的も見えなくて…
本当にこっちに進んでいいか、道を誤ったんじゃないかとか…焦って迷って、結局どこにも行けなくて…訳もなく不安になって…ドツボにおちいって……」
「・・・」
「それで気がつくとね、自分も闇に紛れて黒く染ってて…
もうなんだっていいやってなってるの。
誰かに助けを求める気力も湧かなくて…。
"泳げたい焼きくん" みたいに、たった1人でも気持ちよく泳げたらいいのにね。」
「……俺も、似たような夢を見ることがある。
俺の場合は、黒い闇にただひたすら飲み込まれていくんだ。下へ、下へと…
手を伸ばそうとも、上を見上げようとも思わない。
誰も自分を救えないって心のどこかで思ってるんだ。」
ゆっくりと目を閉じると、
今まで視界に入っていた真っ白い雲が、
たちまち真っ黒い闇に包まれた。