第10章 return
肆番隊隊長、スマイリーこと河田ナホヤだった。
ランはイラつきながら通話ボタンを押す。
「なによ!!!!」
ビクッ!!
と電話の向こうで怯む息が聞こえた気がしたが、今のランはとにかくイキリ立っていた。
«あ、あれっ?!ラン?だよな?»
「そーだけど何!!今忙しーの!!!」
«いや、こっちの方がぜってー忙しいから聞いてくれ!!大変なことになった!!»
「あ?」
«パーちんがサツに捕まったんだよ!!
んでマイキーとドラケンの喧嘩が止まんなくって…»
「……は???」
«とにかく!早く来てくれ!収拾つかねえんだ!!
いつもの場所にいる!!とにかく早»
聞き終わる前にピッと電話を切り、バタバタと立ち上がる。
顔面蒼白になっているランを、三ツ谷が引き止めた。
「待て!どーしたんだ!!」
「三ツ谷く……どうしよう…」
「は?どうした、落ち着け」
ハァハァと息を荒らげるランを訝しげに見つめる。
「春樹が捕まって…万次郎と堅…が…。」
パッと目を見開く三ツ谷がランの手を引いた。
「飛ばすぞ!掴まれ!」
三ツ谷のバイクの後ろにはかなり久々に乗った。
もう2年ぶりだろう。
本来なら嬉しいはずなのに、
ちっとも嬉しくないのは、先程の彼との会話のこともそうだし、今起きている信じ難い現実が、心をぐちゃぐちゃに掻き乱しているからだった。