第10章 return

｢あのね……｣


｢？｣


｢私……三ツ谷くんのこと…大好きだよ…｣



目が合ったまま、しばしの沈黙が流れる。

三ツ谷は徐々に目を細めて笑みを浮かべた。


｢ふ…またそれかよ。
俺も大好きだぞっ！ははっ｣


｢もうそうやって流されるのは嫌なの！！！｣


つい声を荒らげてしまった。
いい加減、この繰り返しはうんざりだと思った。

三ツ谷は目を丸くして口を閉じた。



｢……三ツ谷くんの"大好き"はさ…
どういう意味なの？
三ツ谷くん、ずっと前から
私の気持ちに気付いてるでしょ？｣


｢・・・｣


｢私とおんなじ意味に受け取って…いいの？｣


｢……俺…は……｣


三ツ谷はスっと視線を逸らした。


｢俺は…違う…と思う｣


｢……え？｣


｢悪ぃ…多分、お前の言うそれとは違う…｣


｢それって…っ…｣


｢俺は…お前のこと、
"仲間として" 大切だってことだ…
それ以上でも以下でもない｣


ランの心臓は傷付いたようにチリチリと痛みを帯び始めた。

虚しさ、切なさと同時に、
少しの怒りを含んだ感情が湧いてきた。