第3章 react
渋谷の風俗街で生まれた。
オヤジは知らねー。
母親は風俗嬢。
2歳の俺を残して消えた。
ピンクのタオルと、ローションの匂いに塗れて、
俺は育った。
親の働いていた風俗店の一室が
今でも俺の家だ。
風俗の女たちや従業員たちは、俺の事をケン坊と呼び、家族同然に育ててくれた。
俺は喧嘩が強くて、小学生の奴らは学校で俺を見かけると舎弟のように頭を下げる。
"ドラケン" そう呼ばせている。
そして去年、こめかみに龍のタトゥーを入れた。
「小5で墨か…。ロクな大人になんねーなぁ」
そんなふうに墨屋のオヤジは言ったけど、
俺はこれをすげえ気に入っている。
三ツ谷が路上の壁に描いた龍の落書きだ。
後日、三ツ谷まで俺と同じ場所に同じもんを彫ってきたから唖然とした。
まぁあいつは髪で隠してるから
知ってる奴はいないだろーけど。
俺の体はその辺の中学生よりデカかった。
小5でドラゴンのタトゥー、喧嘩は一網打尽。
逆らうやつなんて誰もいなかった。