第10章 return
悪ぃ、ラン…
"ずっと変わらずそばにいる"
それは約束できねぇかもしんねぇ。
俺のお前に対する気持ちって
どんどん変わってってる。
明らかに、確実に、
"女" としてお前を見てる。
こうして無防備に寝てるとこにも
自分のドロドロした欲が滾ってくる。
どんどん大人の女になってくお前を
そんな目で見てる俺の感情に
歯止めがきかねぇ。
だから"女"のお前に手を出す"男"を
つい乱暴に引き剥がしてやりたくなる。
なぁラン…
本当はお前、今日、
三ツ谷を突然殴った俺に
その意味を聞きたくてここへ来たんだろ。
多分俺、このままじゃお前の傍にはいれねぇな。
マジでなんかしでかしちまいそうなんだよ
そんな自分が、許せなくて怖くて仕方ない。
だってお前は俺のこと、
昔っからなんとも思ってないから。
こうして俺の前で安心しきったように
簡単に寝ちまうのがイイ証拠だ。
もしもいつか、
俺がお前の傍から離れても…
これだけは覚えててくれ。
俺はずっと、お前の味方だ。
それで、先に謝らせといてくれ。
「ゴメンな…」
ランの耳にゆっくりと口付けて
そう囁いた。
ランの長いまつ毛が僅かに揺れ動いた。
"これ、胡蝶蘭。
"幸福が飛んでくる"って花言葉があるの。"
胡蝶蘭に指を滑らせ、目を細めた。
俺じゃなくて、ランに、そして東マンに、
これからたくさんの幸福が飛んできますように。
その願いを込めて、
ゆっくりとランの首筋の卍に口付けを落とした。
「好きだよ、ラン…
多分この先も、ずっと。」
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