第10章 return
その仕草に、思わずドキリと鼓動が跳ねて目を逸らした。
「ラン…お前は…
どんどん綺麗になってくな…」
「へ?!」
突然ポツリと言われたその言葉に、
素っ頓狂な声が出てしまった。
「ははっ。その反応は色気ねぇけどな」
「なななにそれ…」
「きっとこれから、もっと良い女になってくんだろうな。
ガキの頃の、俺が知ってるランとは別人みてぇな…俺の知らねぇお前に……」
子供の頃から見てきたランが
どこかへどんどん遠ざかっていくようで
少し、いや、かなり寂しく感じていた。
「私は…私が…こうしてどんどん大人の女みたいになってくのが…怖いの。どんどん…"女"っぽくなっていっちゃうのが…なんだか…怖くて…」
消え入りそうな声でそう言い、
酷く不安そうに顔を歪めているランを、
強く抱き締めたい衝動に駆られる。
「そんなこと怖がるな。
お前が変わっても、周りは何も変わらない。」
「じゃあ圭介も…ずっと変わらず私のそばにいてくれる?」
「ああ…」
ふふっと笑って安心したようにまた花を弄りだしたランはいつのまにかうつらうつらし、コテっとテーブルに伏せて眠ってしまった。
「はぁ…電池切れたようにいきなり爆睡するとこマジでマイキーみてぇだよな…」
顔をのぞき込むと、「お腹いっぱい…」とむにゃむにゃ寝言が耳に入った。