第10章 return
どら焼きを取りたいのだが、スイーツエリアにデンっと立っている大寿のせいで商品がまるで見えない。
「チッ。…あのー…」
舌打ちをしてから声を出すが、まるで聞いていないようだ。
しかもなにやらブツブツ何かを言っているので耳を潜めた。
「ドーは どつくのドー…レーは連打のレー…
ミーは 皆殺しのミー…」
「・・・あのー。
ドはどら焼きのドだし、レはレモンタルトのレだし、ミはミルクレープのミだと思います」
「ん?」
大寿が振り返った。
間近で見ると、圧倒的な体躯に、恐ろしい迫力のあるオーラで一瞬怯みそうになる。
(やばー。久々に見たけどやっぱすっげー…
って!なんで私が怯まなきゃなんないんだよ!!)
「てかどいてくれますか?商品が見えません。」
キッパリハッキリ真顔でそう言って押しのけた後、どら焼きとミルクレープを取ってカゴの中に入れた。
「あれ…レモンタルトはないな…」
「っ!…てめっ… 月乃じゃねぇかよ!
ぎゃはははは久しぶりだな!!
1人でお買い物かぁ〜?寂しい女だなぁ〜!」
「…てめぇに言われたかねぇよ」
(バカかコイツ。)
ランは大寿を無視して別のエリアへ足を運んだ。