第10章 return
ドラケンはおぶっていた万次郎を何とか起こして病室へと足を運んだ。
「あれ… ランがいねぇな…
もう帰ったかな。」
ドラケンも万次郎も、ベッドに横たわる無惨な女の子の姿を遠くから見つめる。
「頭7針縫って、歯ぁ折れて、左目は網膜剥離、体中打撲で肋骨折れて5日間意識ねーって。」
ドラケンの言葉に、万次郎は黙ったまま無表情でベッドを見つめている。
「メビウスにやられてこの仕打ちだ。路上に倒れてたのを通行人が見て通報したんだ。」
「何しに来たんだお前ら!!」
怒鳴り声を上げて近づいてきたのはその子の父親だった。
母親とランも後ろにいる。
どうやらランはお見舞いの花を花瓶に生けに行っていたらしく、それを持っていた。
「娘をこんな目に遭わせてのうのうと顔出しやがって!!帰れ帰れクズ共が!!」
「ち違うんです!この人たちは私の友達で」
ランが庇うように2人の前に出た。
「やっぱりお前も、クズの仲間だったのか!
どーりで普通じゃない匂いがしたわけだ!」
ガシャンと花瓶を振り払われ、飛び散った花と水が床を汚した。