第8章 resist
「無鉄砲な人でさ。自分よりぜんっぜん強ぇ奴にも平気で喧嘩挑んじゃうの。」
「へー、かっけぇ人だったんすね!」
「タケミっち、兄貴に似てる」
「へ?!そんなカッコよくねぇっすよ!どこをどう見たら!」
「確かにタケミっちみたくダサくねーなっハハハ」
「それは酷いっす」
笑い声が空に向かって消えていく。
真一郎は確かに喧嘩が弱かった。
それなのに真っ直ぐで、そして彼の周りにはいつも人がたくさん集まっていた。
「今って不良がダセェって言われる時代だろ?
兄貴の世代はさ、この辺りもすっげー数の暴走族がいてさ、その辺をチョッカンコール鳴らして走ってた。
みんな肩肘張ってさ、喧嘩ばっかして、でも自分のケツは自分で拭いて。そんな奴らがなんでダセーんだ?」
万次郎は遠くを見つめて静かにそう言った。
「だから俺が、不良の時代を創ってやる。
お前もついてこい。
俺はお前が気に入った。花垣武道。」
「喧嘩強ぇ奴なんていくらでもいんだよ。
でもな、譲れねえもんのためならどんな奴にでも盾つける。お前みたいな奴はそういねぇ。このランもそーだ。」
そう言ったドラケンの隣にいる無表情のランをタケミチは見つめる。
この人も、その強さの正体がそれだったのか?
女の子でそこらの男より強いなんて、きっと並大抵の努力じゃなかったはずだ、と思った。