第8章 resist
「じゃ、タケミチくん、ヒナ行くね?」
「っえ、あ、デートは?」
「今度でいいよ。
せっかく友達が遊びに来てくれたんだし!」
そんな日向に万次郎は手を振る。
「バイバーイ。今度は叩かないでね♡」
ランも手を振りながら、
「いい子だなぁ〜」
と呟いた。
「滅多にいねーよあんな子。
大事にしてやれよ、タケミっち。」
そう真剣に万次郎に言われた。
(そう…だからこそ俺は…
絶対にヒナを助けなきゃなんないんだ!)
道中、タケミチのチャリの後ろに万次郎、
ドラケンのチャリの後ろにランが乗っている。
天気が良くて、そよ風が気持ちいい。
ランはなんとなく、このタケミチという男もヒナと呼ばれていた女もすごく好きになれそうな気がしたし、万次郎が気に入った理由もわかる気がした。
「あの、なんで俺の事なんか気に入ったんすか?」
タケミチが自転車を漕ぎながらまさにその疑問を万次郎にぶつけていた。
「くっだらねー質問」
「すみません…」
「俺、10個上の兄貴がいてさ…死んじまったんだけどね」
明るく言ってはいるが、その切なげな笑みがランにとっては1番辛いものだった。
真一郎の話はあれからほぼしなかったのだ。