第6章 *甘い匂いに誘われて♂(セトとカノ)オメガ
アジトに続く路地裏、そこは人通りも少なく薄暗い。
ちらほら見える街灯がほのかに光を発してるのだが、それだけでは暗闇を掻き消す程の明るさはない。
『っはぁっ‥っくぅ』
大通りから路地裏を歩く一人の男性。
彼はとても苦しそうに顔を赤らめ、時々びくつきながらたどたどしく歩いていた。
この世界には2つの性別があり、更にもう1つα、β、Ωが存在する。
15歳になると必ず検査をするよう国から義務つけられていて、
α、βにいたっては特に必要な物がないのだが‥Ω‥には必要な物‥すなわち、抑制剤が必需品である。
3ヶ月に一度ヒート‥女性の生理期間のように一週間続くフェロモン放出。本人に至っては無意識なのだが、ヒート期間中は甘ったるいフェロモンを放出しαを惹き付けるのだ。
その匂いを即座に感知するのはα。βも稀にそのフェロモンに惑わされる。
その匂いを嗅いだαは理性がぶっ飛び、Ωを襲う‥そうならないためにも薬は必要不可欠‥なのだが、今回の彼には効き目が薄かったらしい。
このヒート期間中に中だしされては男といえども妊娠をしてしまう。更に最悪な事態がもう1つあり、
SEX中にαにΩのうなじを噛みつかれればΩの意思なしに番にされてしまう。
番になれば溢れんばかりのフェロモンは番になったαにのみ放出され
番ではない人に抱かれれば、眩暈、吐気、頭痛などの拒絶反応をする。
一度噛まれればΩにとっては、噛みついたαただ一人で番解消は不可能なのだが、αからの解消はできる。
それゆえ、番破棄になったΩはヒートを向かえる度に苦しむのだが、誰が抱いても苦痛だけ続くのだ。
『‥んっ‥はぁっ‥早く家に帰らないとっ』